DJ SOULJAH

今回は先日、異例の記録を打ち立てている『The Exclusives Hip Hop Vol.2』に収録され話題を呼んでいるHip Hop界の最重要人物 Krs-Oneの登場です。

KRS-One(本名 ローレンス・クリシュナ・パーカー、) ヒップホップのMCとして活動する、クリス・パーカーブラストマスター、ティーチャ などの別名も持っている。彼はヒップホップ界に大きな影響力を与えてきており、数 多くのラッパーたちの詞に登場したり、ヒップホップの「権化」などと表されたりする こともある自他共に認める No.1 Mc

Q. まずは自己紹介をお願いします。

A. Yo 日本のみんな!「Hip Hop ティーチャー」ことKRS-Oneだ。

Q. この度 NYで活動する日本人DJと、日本の作品に参加したことの感想は?

A. DJ Souljahと日本の作品でコラボレートできたことは、オレにとっても特別な意味 を持つんだ。まずは、1990年に作った“You Must Learn”という曲を新たにリメイクで きたってこと。今回DJ Souljahは、20年の時を経て、このクラッシックを再び世に出 すチャンスをくれた。たくさんある曲の中から、20年前に作ったこの曲を選んでくれ たことが嬉しかったよ。だからこの話をもらった時はなんの迷いもなく「やるよ!」っ て返事をしたんだ。リリックも気に入ってるし、Souljah達 (Cut Creator$)が作って くれたトラックも最高だと思う。

元々オレは日本の事が大好きだし、日本のHip HopシーンがKRS-Oneの事をリスペクト してくれている事も知ってる。ただ、個人的に飛行機が好きじゃないから、なかなか 来日できないんだよ(笑)。船で行けたらベストなんだけどね(笑)でも是非日本に行っ て、ライブだけじゃなく学校を訪問して公演をやりたいんだ。子供にも神道の文化を 学ばせたいね。ラッパーとしてだけじゃなく、Hip Hopを教えるティーチャーとして日 本に行きたいね。

今回 Souljahはそういう夢を実現するためのチャンスを与えてくれ たと思ってる。
Souljahがオレに「やってくれ」と言ったのは、バトルラップでもなく、コマーシャル なラップでもなく、「ティーチャー」としてのオレが作ったクラッシックだったんだ。 これには本当に感謝してる。

Q. 今回はクラッシックの曲を使ったトラックだけど、それについてはどう思った?

A. この曲のリリックにはガチャガチャしたトラックは合わないと思うんだ。そういう意味でも、サンプリングした“カノン”はベストな選択だったと思うよ。こういうシンプルなトラックだと、リリックの内容や意図がきちんと伝わると思う。個人的にも、こういった内容のリリックには、ある程度スローでシンプルなトラックが合うと思うね。きっとCut Creator$は、オレがこの曲のメッセージを伝えやすいように、こういうトラックを作ってくれたんだと思う。そういう意味でもCut Creator$は才能のあるトラックメイカー チームだと思うね。

Q. それ以外に20年の時を経て、“You Must Learn”のリメイクをやりたいと思った理由 は?

A. 世の中のタイミング的に今、この曲を再び聴いてもらいたいと思ったからだ。
最初にこの曲をリリースした1990年のアメリカは教育に問題を抱えていた。当時は、学校に行っても本当に必要な事は教えてもらえなかったし、政府も教育の重要性を理解していなかった。あれから20年経った今、世界は再び同じ問題に直面してる。もちろん教師に対する教育も必要だとは思うけど、今回のSouljahとのコラボレーションで、現場で必死に子供達を導こうとしている教師に対するリスペクトを示したかったんだ。

誰でも音楽を聴いて、楽しい気分になったり、勇気付けられたりすると思う。だったら、もっと社会問題に目を向けさせるような曲が世の中に出れば、きっとこの問題について考えてくれる人も増えると思うんだ。20年前に問題視していた事が、20年経っ
た今でも十分に改善されていない現状は無視できないだろ?この20年、Hip Hopシーンはどんどん巨大化して、マーケティングだコマーシャルだ…そういう方向ばかりを向いてきた。Souljahは、今こそ音楽業界も社会問題に真剣に向き合う必要があるってことを再び主張する機会を与えてくれた。

Q. 今、音楽業界について触れていたけど、この曲をリリースした1990年と今、業界は 変わった?

A. 昔は、機材を揃える金がなければ、それを補うために色々なアイデアを出した。そ ういう作業がアーティストのクリエイティビティを伸ばしてたんだ。もともとビート だって、人の声で表現できる。ラップだって人の声で作られている。当時のHip Hopに は、人の体から生まれたって意味での創造性があったんだ。それに比べて今は、全て がデジタル化されている。どうやって機材を操るかってところばかりが重要視されて いる。別にオレは今の状況を批判する気はないんだ。技術の進化は素晴らしい事だと 思う。だけど、オレは44歳になった今の自分自身を愛してるんだ。この時代に44歳の ラッパーとして生きていることを誇りに思ってる。だからある意味、こんな厳しい時 代を生き抜かなきゃいけない若いアーティストに同情してしまう気持ちもあるんだ。

この業界で44歳って言う年齢はかなり高齢の部類だと思う。だけど、ベテランだからこそ自分がやるべきことを貫きたいと思ってるんだ。もし若いアーティストに「これ までの長いキャリアで何を学んだ?」って聞かれたら、迷わず「心の平和だ」と答える と思う。だから、オレが長い時間をかけて見つけたこの「心の平和」を若い奴らにも 伝えたいと思ってる。だけど残念な事に昔も今も、ラップの世界に「平和」を見つけ るのは難しい。ドデカイ豪邸のキングサイズのベッドに寝そべっているような若いラッ パーでさえ「心の平和 」を見つけられないんだ。

オレは安いモーテルのシングルベッ ドの上に寝ていても「平和」がなんだか知っている。オレに豪邸なんて必要ないんだ。 そんなものがなくても「平和」はいつもオレの心の中に存在する。とにかく、今の若 いラッパーには「心の平和」を得る方法を学んで欲しいと思ってる。ソレを得るため には、どれだけ金を持ってるかってことは関係ないんだ。広い家に住んだところで 「心の平和」は得られない。要は人間としてシンプルな生活を送ること。最近の曲に 慣れてしまっているリスナーは「何でオッサンのKRSがスーパーマーケットのクーポン について歌ってるんだ?」って思うかも知れないけど、Hip Hopは現実を映す鏡なんだ よ。そういう状況が存在する限り、ラッパーはそれをビートに乗せて伝える義務があ ると思ってる

Q. では、あなたにとってのゴールや目標は?

A. まずは「平和」。これはオレにとってのゴールであり、すでに手に入れたもの。
これまでには、アーティストとして色々な賞も貰ったし、たくさんの素晴らしいアーティ スト達と共演させてもらった。それに今でもすごくセクシーな妻もいるし、素晴らし い子供も授かった。これ以上何を望むって言うんだい?KRS-Oneとしては、十分すぎる ほど色々なものを得たよ。明日死んだとしても悔いはないよ(笑)。

オレは世界のどこ にいても、その状況に満足できると思うんだ。オレという人間としては、ある意味完 結してるんだ。だから、オレ自身が自分に望む事はない。オレは自分自身の「Hip Hop」を見つけた。もし、オレに使命があるとしたら、それは本当の意味での「Hip Hop文化」を伝える事だと思う。何十年も昔にHip Hopが生まれて、あらゆる団体 がHip Hopサミットやイベント、DVDや本でHip Hopについて議論してきた。だけど、議 論するだけじゃ意味がない。

誰かが体を使って「Hip Hop文化」というものを体現する 必要があると思う。そしてオレがそれを伝える立場でありたいと思ってる。今じゃ Hip Hopはアフリカ系アメリカ人の文化じゃない。Hip Hopが生まれる前は、人は気持 ちや感情を言葉で表現して来た。だけど、君が何を言おうと、それがオレには分から ない日本語である限り、オレはそれを理解する事は出来ない。だけど、Hip Hopは違う。 たとえ言葉が違っても、人はHip Hopを理解する事ができる。これがHip Hopの本来の 意義なんだ。今、必要なのは、Hip Hopの原点をもう一度思い出す事だと思ってる。そ して「Hip Hopシティ」とでも言うべき文化の原点を築くことだよ。

Q. 今後日本に来る予定は?

A. まだ決定している訳じゃないけど、絶対に行くつもりだよ。ラッパーとしてのステー ジもやりたいけど、「Hip Hopの伝道師」として行きたいと思ってるんだ。日本の若者 と話をしたいと思ってるし、彼等が自分の政府についてどう思っているのか聞いてみ たいね。日本もアメリカも10代の子たちが抱えている問題は同じだと思う。それ以外 にも日本の文化的な場所や自然も見てみたいし、ヘルシーな日本食も食べたいね!初め て日本に行った時、レストランの入り口にプラスティックの見本が飾られていたのに はびっくりしたけどね(笑)。

Q. では、最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

A. オレはみんなのことをファンだとは思ってないんだ。みんなはオレの家族。もし日 本にも本物のHip Hopがあるんだったら、今こそ立ち上がってほしい。そして嘘や偽り じゃない、本物のHip Hopがどんな存在なのかを、仲間と一緒に伝えてほしい。自分自 身の心に対して、「本当の自分に向き合う勇気はあるか?」という問いを投げかけてほ しい。本当の自分に向き合うことがHip Hop。もし君がHip Hopに対して誠実であれば、 Hip Hopも君に対して誠実でいてくれるはず。まずは、自分としっかり向き合い、自分 が誰であるかということを考えてほしい。それが世界を変える、自分を変える第一歩 になるはずだから。

Interview 渡辺深雪 / Miyuki W. Myrthil 

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